ニデックグループ、森精機グループによるM&A戦略、どうなる日本の工作機械業界?

2024/06/30 機械メーカ

注目され続けるニデックの同行

2021年に当時の三菱重工工作機械を電撃的にニデックグループが買収されました。三菱重工の工作機械部門が身売りされるという噂は流れており、森精機やジェイテクトがその候補として噂されていましたが、まさかニデックとは、私も含めて多くの関係者が驚きました。聞いたときは、ああ、歯車加工機とどの加工技術が欲しいんだろうな、と感じました。ニデックは車載イ―アスクルを次世代の主力事業と位置付けており、それにとってギアを内製化する事は、他社との大きな差別化なる、と素人でも感じました。ギア加工機業界の中では三菱重工はトップメーカであって、ホブやギアシェーパでは、他にはカシフジくらいしか思いつきません。他社に、重工の歯車加工機を使わせない、という意向もあるんだとうなあ、三菱重工の五面加工機や精密マシニングセンターはそのうち世の中からなくなっていくんだとうなあ、と勝手に想像していました。

しかし、実際のニデックのその後の動きは私の予想とは全くことなり、永守さんは本気で工作機械業界の征服しようとしているそうです。その後、粉飾決算と業績不振で喘いでいたOKKを買収、よく分かりませんがイタリアのPAMAという横中ぐり盤メーカを買収、そして2023年にかねてから噂されていた旋盤メーカのTAKISAWAをTOBにて取得しました。

これにてとりあえず工作機械の主力であるフライス系、旋盤系のラインナップはそろいました。永守さんはあと数社は買収するといっているので、普通に考えると研削盤、放電加工機、CADCAMメーカ、板金加工機あたりに触手をのばすと思われます。

岡本工作機械を買収すれば、平面、円筒、ロータリなど主な研削盤ラインナップはそろうので、次は岡本かなあと思っていました、その岡本は先日三井物産と業務提携して増資しました。これはおそらくニデックによる敵対的TOBを未然に防ぐためのもの、というのが専らの噂です。岡本以外の大きな研削盤メーカでは、ナガセがありますがオーナー企業でありちょっと想像できない。アマダマシナリーならおおいにありそうな気もします。

放電加工機では、普通に考えるとソディックがねらい目でしょう。ソディックは形彫放電、ワイヤ放電、細穴放電、更に射出成型機、高速マシニングセンターを持っており、中国でのシェアも高いです。ついでに最近は業績不振で株価も伸び悩んでおり、お買い得では?他にも西部電機もありうるし、三菱電機が産メカ事業部を切り離す事もありそうです。どうなるか楽しみですねえ


対向できるのはDMG森精機くらい

豊富な資金力と、M&Aのノウハウをもつニデックに対して、多くの日系工作メーカは恐々としているのではないでしょうか?一つは自分達が買われてしまうのではないか、という恐れ、もう一つはこの工作機械業界がニデックによってスクラップアンドビルトされてしまうのではないか、という恐れ。永守さんがおっしゃっていたように工作機械業界は、長い間プレイヤーが変わっておらず、新規参入も競争も少ない、保守的な業界でした。それだけ既存プレイヤーの技術力が高い、とう理由もありますが

ただし、これまでのように胡坐をかいているわけにはいかないでしょう。日本国内ではニデックという国産黒船がいきなり暴れだしているし、お隣中国の無数の工作機械メーカだって、さすがにそろそろ技術力をつけてきています。機械設計ていうよりも制御の技術力が重要になっていく工業製品という意味では、AI分野においては残念ながら中国の方に分があるのではないでしょうか?

各メーカ、独自路線でサバイバルしようとしています。安田工業は相変わらず精度にこだわり、オークマは得意のインテリジェント機能を全面に出しています。総合工作機械メーカでは、やはりDMG森精機とヤマザキマザックが2台メーカでしょう。特にDMG森精機は、ニデックに対抗するような動きをみせています。数年前にアマダ(旧ワシノ)の旋盤部門を事業譲渡されていますが、最近では倉敷機械を傘下に収めて、横中ぐり盤を手に入れています。太陽工機とあわせて、長岡市は第二を拠点にするのでは、と地元では話題になっているそうです。そういえば長岡には、ツガミとオーエム製作所もありますね。もしかしたらもしかするかもしれませんよ。

いずれにしても、ニデックに引っ張られる形で、他のメインプレイヤーも危機感をもって、自社の発展のためにこれまでやっていなかったようなアクションを起こすことは、日本の工作機械業界にとっては良いことなのではないでしょうか?

中国などのメーカがいくら価格競争でいどんできても、軽く跳ね返すような力をつけて欲しいものです。

 

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