2024/08/25
日本工作機械工業会(日光会)が詳細な統計をWebで公開しているので見てみましょう?
2023年度の受注合計は約1兆4530億円。そのうち外需が約9960億円なので、外需が約67%となります。近年、工作機械は7割が外需なのでこれは想定内です。ではその外需のうち中国向けはどれくらいの割合なのでしょうか?約2740億円なので、外需の約28%、全体の約19%が中国向けなのです。これはヨーロッパ全体向けよりも大きい数字です(23年に関して言うと、北米向けが約3210億円でNo.1でした)。
ちなみに、日工会の受注統計で史上最高額だった22年は、中国向けが約3770億円でした。22年から23年にかけて中国向けは約△27%なので、中国市場が落ち込むとそれにあわせて日本の工作機械も落ち込む、という訳です。
このコラムは24年8月に書いていますが、直近で日工会が発表した受注統計によると、24年7月は前年同月比8%増で、3ケ月連続のプラスです。これだけ見ると、お、ようやく工作機械業界の景気も回復してきたかな、とか感じますが、よーく見てみると日本国内向けは、なんと23ケ月連続のマイナスなのです。約2年間、日本国内向けの工作機械受注は落ちっぱなしという事です。ではなぜ全体ではプラスになっているのか?もちろん中国です。中国政府による補助金の特需で前年同月比7割増だそうです。
そう、まさに中国さまさまという事なのです。
なんか、これで「景気回復」と言われても、全然実感わかないし、工作機械メーカがもしも喜んでいるのであれば、なんだか複雑な気持ちです。日本メーカが優れた工作機械を開発していくのはとてもありがたい事ですが、それが日本の製造業の発展というよりも、中国の国益に寄与しているような気がしてきます。
また、機械メーカや、海外進出している大手商社とっては売上増になってほくほくかもしれませんが、国内の金属加工業ユーザや、小規模な機械商社にとっては全然ありがたくない話です。メーカの目線が国内ではなく海外にばかり向けられるような印象をもっても仕方がないでしょう。
他のコラムでも書きましたが、工作機械というのは単なる消費物ではなく、その国の工業製品(軍需産業を含む)の発展を左右するほどの影響力をもつマザーマシンです。輸出規制を遵守するのは当然ですが、機械メーカも、単に自社の全体売上ばかりを追い求めるのではなく、日本の製造業を発展するための行動を見えてもらえると嬉しいなあ、と感じるこの頃です。。